現在では、鹿児島茶を代表する品種となっている「ゆたかみどり」ですが、その生まれは静岡県の茶業試験場。そこで実験的に育てられていた「Y-2」と呼ばれる品種は、収穫量が多いものの、霜に弱いという特性を持っていました。
そこで、温暖な地、鹿児島での栽培が始まり、1966年に鹿児島県がこの品種を「ゆたかみどり」と命名したのです。「ゆたかみどり」は現在、茶葉の主力品種「やぶきた」に次いで、全国で2番目に栽培面積の大きい品種になっています。
ただし、寒さに弱いため寒い地域での栽培には適さず、温暖で霜の害を受けない地域で栽培する必要があります。
「ゆたかみどり」の主な品種特性 |
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「やぶきた」より萌芽・摘採期が5日早い早生種 |
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全茶期を通じて収量が多い |
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炭疽病に強いなど、耐病性 |
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耐寒性は裂傷型、赤枯型、いずれも弱い |
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晩霜害を受けやすい |
走り新茶は「ゆたかみどり」
一般的な品種は、立春から数えて八十八夜で新茶が摘まれます。
しかし、早生種の「ゆたかみどり」は七十七夜で摘まれるため、
走り新茶として、4月末には全国に先駆けて流通されます。
「ゆたかみどり」を、「やぶきた」と同じ生産・加工方法でお茶に仕上げても、良い味になりません。そこには特別な技術が必要となります。
具体的には、被覆(収穫1週間前くらいから、黒い覆いを茶園に被せること)と深蒸し(収穫した葉を、たくさんの蒸気で蒸すこと)の技術が、「ゆたかみどり」の美味しさを生み出すカギとなります。
「被覆」の技術
一番茶新葉の効果抑制及び、渋味の減少、美しい濃緑の水色を生み出すために、適採の1週間前から遮光率60%の黒バロンなどで直接・間接「被覆」を行う・晩霜害を受けやすい
「深蒸し」の技術
生茶葉から煎茶を造る最初の工程、「蒸し」の時間を1分から3分程度と長くする。その長い蒸し時間によって、茶葉からの滲出成分が通常の煎茶より多くなり、濃くまろやかな味わいとなる。
※「ゆたかみどり」の美味しさを引き出す技術を確立するまでのお話は、
「下堂園物語」をご覧下さい。