Vol.4 [ドイツ・フランクフルト市] SCHNORR
お茶に適した茶器を使い分け、一杯一杯丁寧に淹れる
ドイツの空の玄関口、フランクフルト。日本からの直行便がある事もあり、ヨーロッパ旅行で最初に足を踏み入れる事の多い街です。経済・金融・交通の中心都市として、また、旧市街は観光客や買い物客で絶えず賑わっていて、活気に満ち溢れています。
そんなフランクフルトの中心街で、一際賑やかな通りに店を構えるのが「SCHNORR(シュノール)」。
奥行きのある店内に、世界中から集めたこだわりのお茶が所狭しと並ぶさまは、さながらお茶の百貨店。インドやスリランカの紅茶をはじめ、数々の中国茶や希少な台湾茶、日本茶だけでも下堂薗の有機緑茶をはじめとした鹿児島茶、宮崎茶、嬉野茶、宇治や八女の玉露などが並び、見ているだけで店主のこだわりを感じます。
輸入品以外にも、仕入れたお茶を店主自ら配合してオリジナルブレンドとして販売しているものもあります。SCHNORRでは特に中級〜高級茶を中心に取り扱っており、今後もっと高級茶にシフトしていく予定だそう。ちなみにお店で今もっとも高いお茶は高級台湾茶で、お値段なんと50gで200ユーロ(約20,900円!)。
フランクフルトの顧客には軽いテイストで甘みのあるお茶が特に人気があるようで、玉露もよく売れているそうです。この日淹れていただいたのは、お店で特に人気が高いという玉露と玉緑茶。お茶の産地で使用されている茶器を使い、そのお茶にもっとも適した形で淹れるのがSCHNORR流。ヨーロッパの水は日本と違って硬水なため、お茶本来の旨味を引き出すのに特に気を使うそうですが、一杯一杯丁寧に淹れているのを見ていると、急須から溢れんばかりのお茶への情熱と愛情が伝わってきました。
Vol.3 [フランス・ヴィッティスハイム] LES JARDINS DE GAÏA
ナチュラルで明るい店内には、壁一面にオーガニック・フレーバーティーが並ぶ
フランス東部・アルザス地方。ドイツとの国境ほど近くに位置する大都市ストラスブールから、40分ほど郊外に車を走らせると、のどかな田園風景にたたずむミニチュアのような可愛い街が見えてきます。ここは人口2,000人ほどの小さな田舎町、ヴィッティスハイム(Wittisheim)。この街はずれにあるのが、オーガニックティーの専門店『Les Jardins de Gaïa』(レ・ジャルダン・ドゥ・ガイア、以下ジャルダン)です。
フェアトレードやオーガニックの緑茶や紅茶、フレーバーティーの製造・販売を手掛けるジャルダンは、フランス国内を中心に欧州各国で高い評価を得ている、知る人ぞ知るオーガニックティーの草分け的存在。1994年の設立以来15年以上にわたって、欧州におけるオーガニックティー普及と発展に努めてきました。
日本茶も取り扱っており、下堂薗の有機緑茶はじめ、有機抹茶、緑茶を使ったフレーバーティーなども人気だそう。取り扱うお茶は450種類以上もあり、量り売りでの販売もしています。お茶を詰める袋は100%天然素材のみを使用。無漂白の紙やセルロースのフィルム、溶剤を使わない水性のインクや糊を使う事で、捨てても土に還るようエコが徹底されています。
オフィス兼工場の建物の横には、販売店とおしゃれなカフェが併設されており、ウッドテラスからは日本の枯山水をモチーフにした素敵な庭が望め、何時間でも居座りたくなる居心地の良さです。この日頂いたのは、ダージリンのファーストフラッシュ。紅茶でありながら鮮やかな緑色をしたこの茶葉は、春先の新茶時期にしか味わえないもので、若々しくも体に染み渡る優しい味わいでした。
ジャルダンの従業員は50人ほどで、その9割が女性。とても自然豊かなゆったりとした環境で、皆さんのびのびと仕事しているのがとても素敵でした。
VOL.2 【ベルギー・ゲント市】
LIMA社・購買部部長 シャンタル・アーテンホーブさん
YUZU・ショコラティエ ニコラス・ヴァネーゼさん
「LIMA社」の購買部部長のシャンタル・アーテンホーブさんと下堂園専務取締役の下堂薗 元。
「SHIMODOZONO IS WONDERFUL! BEAUTIFUL! AMAZING!」
「訳:下堂薗のお茶は素晴らしい!美しい!感動的!」
2011年2月24日、ベルギーのマクロビオティック会社「LIMA社」の購買部部長であるシャンタル・アーテンホーブさんが、ショコラティエの夫ニコラス・ヴァネーゼさんとともに、下堂薗のビオファームを視察に訪れました。アーテンホーブさんは、これまで何度も日本を訪れては食材を買い付けてきました。今回は、鹿児島の特産品である葛、椎茸とあわせて下堂薗の有機栽培の茶畑を視察し、買い付けている食材がどのように栽培されているかを確認しました。
ベルギーのバイヤーが鹿児島の特産品を視察するとあって、地元のテレビ局も取材に駆けつけ、賑やかな視察となりました。
「バイヤーとして大切なのは、原産地を訪れ、どう感じるかを知ること。そして、自分の鼻で香りを確かめること。特にお茶というのは日本国内で沢山栽培されているので、選ぶのは難しい。栽培地に出向いて、目で確かめて疑問に思ったことを質問し、その良さを確かめることが重要。そうすることで、買い付けた商品を自信と愛着を持って販売することができるのです。」
LIMA社は、ベルギーをはじめフランス・ドイツなどヨーロッパ19ヵ国で、日本の食材を含む自然食品などを販売しており、ビオファームで栽培された下堂薗の有機栽培茶は数年前から販売しています。
アーテンホーブさんは、運動靴以外の靴は全てプラダという大変おしゃれな親日家。そのおしゃれぶりが話題になり、これまで女性誌などで「プラダをはいた買い付け人」として取材を受けています。この日は土の感触を確かめたいとのことで、残念ながらプラダではない運動靴(といいつつも、アレキサンダー・マックイーンでした!本当におしゃれです!)でしたが、バッグはばっちりプラダでキメていました。アーテンホーブさんによると、おしゃれは仕事をやる気にさせるエネルギーのようなものだということ。ちなみに、夫のヴァネーゼさんの靴はプラダでした。
そのヴァネーゼさんは、「YUZU」というチョコレート会社を経営しており、店名にもなっている柚子など日本の食材を使ったチョコレートも販売しています。下堂薗のお茶は「YUZU」でも販売されており、下堂薗とお茶の水女子大学が協同開発した“ゆず&ミント緑茶”にちなんだチョコレートも最近完成したとのことです。過去において、東京都内の高級セレクトショップやパークハイアット東京のラウンジでも「YUZU」のチョコレートを販売したことがあり、これからもまた日本で販売したいと話していました。
二人は、地元鹿児島のテレビ局の取材を受けながら、およそ1時間かけて視察を行いました。アテンドした下堂薗元(はじめ)専務は、2007年に仕事でベルギーを訪れた際にアーテンホーブさんに会っており、久しぶりの再会を喜びました。そして手塩に掛けて育ててきたビオファームについて、アーテンホーブさんらに丁寧に説明しました。
「ビオファームを始めた時は苦労したけれど、ヨーロッパの人たちに有機栽培の価値を認めてもらっているのだなと実感して、とても嬉しかった。」
これを受けて、アーテンホーブさんは「数多くの茶畑からこの下堂薗のお茶を選んだ理由のひとつは、やはり有機栽培であるということ。有機栽培というのは、未来を開拓するものでもありますから。」と語り、今回の視察が有意義であったことにとても満足していました。そして、鹿児島の特産品をこれからもヨーロッパで広めて行きたいと笑顔で話していました。
Vol.1 [ドイツ・ボン市] 市川亮治さん
ドイツのボンで移動式茶屋を営む市川さん
ドイツ西部、ケルンの南約20kmのライン川沿いに位置するボン。ここで、自転車と荷台で移動式のお茶屋(ドイツでは"Teestand"と呼ばれている)を営んでいるのが、市川亮治さん。早朝は朝8時から10時まで、ビジネス街に続く地下鉄出口のすぐそばで働くビジネスマンたち(主に国連、DHL、Deutsche Welle(マスメディア会社)、郵便局で働く人たち)を相手に、日本茶の販売をしています。
「個人的にはもうちょっと落ち着いた雰囲気の場所でお茶を売りたいんですけど、なかなかそうはいきません。」
「お茶はコーヒーと違って安らぎを与えてくれます。僕自身、実はコーヒーが飲めないんです。だから、自分が味わうことができないものをお客さんには提供しない!っていうのが、僕のモットーです。よくお客さんから、コーヒーはないの?って聞かれるけど(笑)」
市川さんは、基本的にはテイクアウトのコーヒーのように、できたてのお茶を紙コップの容器に入れて持ち帰れるように販売しており、また茶葉の販売も合わせて行っています。お茶は一杯1.50〜3.00€で、それぞれ香りと味が異なる11種類の茶葉を用意。男性客に人気があるのが、暖かみとボリュームのある「かぶせ茶」の一番茶で、女性にはマイルドな口当たりで後味がほんのり甘い「茎茶」が人気だそう。
週末にはライン川沿いの落ち着いた場所に店を出し、小さなベンチを2つ用意して、お客さんが腰をおろしてゆったりとお茶を満喫できるようにしています。その場合には急須と湯呑みまたはガラスのコップなどでお茶を提供します。この安らかな"お茶のオアシス"、お祭りや賑やかな催し物しか知らないドイツ人にとっては目新しい体験で、特に女性客から人気なんだとか。
「ドイツはコーヒー文化なので、お茶(特に緑茶)はあまり馴染みがありません。ある調査によると、外出時注文する飲み物の99%がコーヒーらしいです。ですからマーケットもシェアも断然小さいですが、少しでも日本の緑茶文化を理解してもらおうと日々がんばっています。」